交通事故の用語集
労働能力喪失説
交通事故の損害賠償を考えるうえでは、損害というものをどう捉えるかという重要な問題があります。この問題の考え方のうち、労働能力喪失説は、人の労働能力を一つの資本財と考え、死傷による労働能力の全部ないしは一部の喪失を損害ととらえて損害額を算定するものです。この考え方によると、現実に収入の減少がなくとも、交通事故により労働能力が低下したこと自体が損害だと考えることができます。近時の人身損害賠償の裁判実務、特に下級審裁判例の多くは、基本的に差額説(交通事故がなかったならば被害者が得られたであろう収入と事故後に現実に得られる収入との差額を損害と考える説)を前提としつつも、この労働能力喪失説をも加味した考え方を採用しているといわれています。