裁判例集
交通事故の損害賠償の裁判例: 高松高裁H18-10-24
交通事故の裁判例
危険運転致死傷罪における「殊更無視」について、故意に赤色信号に従わない行為のうち、およそ赤色信号に従う意思のないものをいうと判断した。
交通事故の裁判例判旨
本件状況下における被告人の行為は,赤色信号であることを確定的に認識し,しかも,特段の支障がなかったにもかかわらず,この信号に従わず,しかもその際,赤色信号による交通規制が確保しようとする,規制されない側の交通の安全に対する配慮もなかったと認めることができるのであり,このような場合,被告人には,およそ赤色信号に従う意思がなかったと認めることができる。
これに対し,原判決は,被告人が本件赤色信号に気付いて急ブレーキをかけても停止線の手前で停止することができたかどうか疑わしいこと,被告人が,本件事故以外の場面では,信号を無視したことがないこと,本件事故の際にも,停止線手前で余裕を持って停止できる地点で本件赤色信号を発見していれば,赤色信号を無視することなく,自動車を停止させていた旨述べていることを根拠に,被告人におよそ赤色信号に従う意思がなかったものとはいえないと結論付けているが,上記説示したところに照らして是認することはできない。
そうすると,刑法208条の2第2項後段所定の「殊更無視」に関する誤った解釈を前提に,被告人が,赤色信号を殊更に無視したとは認定せず,被告人を危険運転致傷罪で有罪としなかった原判決には,この点で事実の誤認があり,これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。