裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例: 福岡地裁H20-1-8

交通事故の裁判例

3人を死亡させ、2人を負傷させた危険運転致死傷等の事案について、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態ではなかったとして業務上過失致死傷と道路交通法違反(酒気帯び運転)を認定した。

交通事故の裁判例判旨

被告人は,本件事故前に相当量の飲酒をした上でマジェスタを運転し,本件事故を惹起したものであって,本件事故当時,被告人が,酒に酔った状態にあったことは明らかである。しかしながら,他方,被告人は,「M」を出た後,前の駐車場に停車させていたマジェスタを運転して出発し,本件事故現場に至るまでマジェスタを走行させてきた間に,アルコールの影響によるとみることができる蛇行運転とか,居眠り運転等に及んだことはなく,しかも,その間衝突事故等も全く起こしていなかったことが明らかである。
 そこで,さらに,被告人が,本件事故当時,「正常な運転が困難な状態」すなわち,現実に,道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあったかどうかについて見ると,被告人は,マジェスタを運転して「M」前の駐車場を出発後,本件事故現場から約300メートルf寄りの道路左側にマジェスタを停車させるまでの約8分間にわたってマジェスタを運転しているところ,「M」前の駐車場から本件交差点までは,左右に湾曲した道路を道なりに進行し,その途中に点在している交差点を左折し,あるいは右折し,更には直進通過することを繰り返していただけでなく,住宅街の中の車道幅員約2.7メートルしかない道路においても,接触事故等を起こすことなく,車幅1.79メートルのマジェスタを運転,走行させていること,また,本件事故直前,ランドクルーザーを間近に迫って初めて発見するや,急制動の措置を講じるとともにハンドルを右に急転把するという衝突回避措置を講じていること,さらに,本件事故直後,マジェスタが反対車線に進出していることに気付くや,慌ててハンドルを左に急転把してマジェスタを自車線に戻していることが認められ,これらの事実はいずれも,被告人が現実に道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行っていたことを示すものであって,本件事故当時も,被告人が正常な運転が困難な状態にはなかったことを強く推認させる事情と言える。
 他方,被告人において正常な運転が困難な状態にあったのではないかと疑わせる事情としては,本件事故直前にマジェスタの速度を時速80ないし100キロメートルに加速させ,相当時間にわたって脇見運転を継続したことを指摘できるが,上述したとおり,そもそも,本件事故当時の具体的な道路及び交通の状況等にかんがみれば,時速80ないし100キロメートルという速度で走行することが必ずしも異常とは言えない。
 また,被告人が本件事故直前に相当時間にわたって脇見運転を継続したという点については,次のような事情も指摘できる。
 まず,被告人が脇見運転を継続していた区間はほぼ完全な直線道路である上,片側一車線の車道幅員は約3.2メートルと広かったこと,しかも,被告人にとっては通勤経路であって通り慣れた道であったこと,本件交差点を左折してから進路前方を走行している車両は見えなかったことからすると,被告人は脇見をしやすい状況にあったと言える。また,被告人は,脇見運転の継続中も,蛇行等をした形跡はなく,マジェスタを走行車線から大きくはみ出させることなく運転していたと認められるから,漫然と進行方向の右側を脇見していたとはいえ,進路前方に対する注意を完全に欠いてしまっていたとまでは言い切れない。
 そして,何より,上記のとおり,脇見運転の前後で被告人が現実に道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行っていたことをも併せ考慮すると,結局,脇見運転の事実をもってしても,被告人が正常な運転が困難な状態にあったと認めるには足りないと言うべきである。
 さらに,本件事故の前後における被告人の言動中には,検察官が指摘するように,被告人が酒に酔っていたことをうかがわせる事情が存在する一方で,被告人がいまだ相応の判断能力を失ってはいなかったことをうかがわせる事情も多数存在すること,しかも,本件事故の48分後に実施された被告人の呼気検査の結果において丑警察官は被告人が酒気帯びの状態にあったと判定していたことからすれば,被告人の酒酔いの程度が相当大きかったと認定することはできない。
 以上を総合すれば,本件事故当時,被告人がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態にあったと認めることはできないと言うべきである。

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