裁判例集

一覧へ戻る

交通事故の損害賠償の裁判例: 東京高裁H11-3-25

交通事故の裁判例

自家用自動車総合共済契約における他車運転条項中の免責要件の「他の自動車の使用について正当な権利を有する者の承諾を得ないで」に関し、運転者がその自動車に正当な権利を有する者の承諾があると信ずるについて正当な理由がある場合にもこの免責条項の適用はあると判断した。

交通事故の裁判例判旨

1 本件特約条項及び本件免責条項は、原判決別紙自動車共済目録記載の自家用自動車総合共済契約に自動的に付帯される他車運転条項に含まれるものであり、自家用自動車総合保険にも本件特約条項及び本件免責条項と同旨の条項を含む他車運転危険担保特約が自動的に付帯される。
特定の自動車を被共済自動車として自家用自動車総合共済契約を締結した記名被共済者、その約款所定の要件を充足する親族等は、当該被共済自動車によって他人に損害を与えたため対人賠償損害、対物賠償損害が生じた場合に、対人賠償共済金、対物賠償共済金の支払いを受けることができる。しかし、当該被共済自動車を通常使用することが予定される記名被共済者又はその約款所定の要件を充足する親族その他の者であっても、社会生活上様々な事情から、記名被共済者又はその約款所定の親族が所有したり常時使用したりする自動車以外の自動車を一時的に運転することが避けられない。そのような場合に、一時的に運転した自動車に任意保険あるいは共済契約が付されていない可能性があることを考えると、保険、共済の保護を受けるためには、そのような一時的に予定外の自動車を運転する場合に備えて自動車運転者損害賠償責任保険等に加入する必要があるが、共済掛金と二重の保険料負担となる。
2 他車運転条項の趣旨は、記名被共済者、その約款所定の要件を充足する親族等に、被共済自動車以外で所定の要件に該当する自動車を一時的に運転する場合にも、対人賠償損害・対物賠償損害共済契約、自損事故条項等を拡張して適用し、当該自動車に保険や共済が付されていない場合でも、記名被共済者、その約款所定の要件を充足する親族等を保護するとともに、そのような運転中の事故による被害者の救済を図ることを目的とするものと解することができる。
しかし、他車運転条項は、自家用自動車総合共済契約に割増の掛金なしに自動的に付帯されるものであるから、被共済自動車一台分の掛金を支払うことによって複数の自動車によって生じる事故を担保する結果となり、一台一契約の原則の例外となっている。そのことから、他車運転条項は、記名被共済者、その約款所定の要件を充足する親族等が一時的に運転する自動車についても要件を絞って、保護する範囲を、他車の運転が被共済自動車の使用と実質的に同視できる場合に限定しているものということができる。
3 他車運転条項中の本件免責条項である「被共済者が他の自動車の使用について正当な権利を有する者の承諾を得ないで、その自動車を運転しているときに生じた事故」の意味について検討する。
まず、右免責条項の解釈に当たっても、他車運転条項によって保護する範囲を他車の運転が被共済自動車の使用と実質的に同視できる場合に限定するとの観点から検討すれば、被共済自動車の使用による事故については、正当な権利を有する者すなわち記名被共済者又はその承諾を得て車を使用又は管理中の者が対人賠償損害又は対物賠償損害の被共済者とされているから、他車運転条項により保護される事故は、当該自動車の所有者等の正当な権利を有する者の承諾を得て運転しているときに生じた事故に限られ、正当な権利を有する者の承諾を得ないで運転しているときに生じた事故であることは免責事由となるということができる。
また、本件免責条項の「正当な権利を有する者の承諾を得ないで」との文言は、原判決別紙自動車共済目録記載の自家用自動車総合共済契約に含まれる約款中の他車運転条項の中のみではなく、自損事故条項六条一項(ケ)、無共済車傷害条項六条一項(ケ)、家族無共済車傷害条項六条一項(キ)、搭乗者傷害特約七条一項(ケ)、家族原動機付自転車賠償損害特約六条(エ)等に免責条項の一部として使用されているところ、一つの共済契約の約款中で使用される同じ文言は、それぞれの条項毎に定義規定がある場合を除き、条項の性質による文言の読み替えはあるとしても同じ意味に解釈するのが相当である。ところで、右自損事故条項六条一項(ケ)と同様の規定を有する自家用自動車保険契約における自損事故の免責条項(普通保険約款二章三条一項三号)である「被保険者が、被保険自動車の使用について、正当な権利を有する者の承諾を得ないで被保険自動車を運転しているときに、その本人について生じた傷害」の解釈について、最高裁判所昭和五八年二月一八日第二小法廷判決(判例時報一〇七四号一四一頁)は、「本件免責条項は、被保険者の範囲を保険契約の当事者が保険契約締結当時通常被保険自動車を使用するものと予定ししかもその者の損害を保険によって填補するのが相当と思料される記名被保険者及びこれに準ずる正当な使用権限者に限定しようという趣旨で定められたものと解すべきであるから、前記免責条項にいう「正当な権利を有する者」とは、一般的には賠償保険の記名被保険者に相当する者(記名被保険者・名義被貸与者)をいうものと解するのが相当であり、したがって、記名被保険者から借り受けて被保険自動車を運転しているときにその借受人について生じた傷害については、保険会社は保険金の支払を免れないが、記名被保険者の承諾を得ないで右借受人から転借して被保険自動車を運転しているときにその転借人に生じた傷害については、保険会社は保険金の支払を免れるものというべきである。」と判示し、原審の判断は右免責条項の解釈適用を誤った違法があるとして原判決を破棄している。同判決においては、運転者が当該自動車を運転することについて、当該自動車に正当な権利を有する者の承諾があると信ずるについて正当な理由があるか否かを問題としていない。また,本件免責条項を始めとする前記「正当な権利を有する者の承諾を得ないで」との文言を含む自家用自動車総合共済契約に含まれる各条項について、文理上当該自動車に正当な権利を有する者の承諾があると信ずるについて正当な理由がある場合を承諾があった場合と同視する解釈を根拠付ける文言の存在は認められない。
以上のような諸点を考慮すれば、本件免責条項中の「他の自動車の使用について正当な権利を有する者の承諾を得ないで、」との意味は、その自動車の実質的な所有者、当該自動車に賠償保険や共済契約が付されている場合にはその記名被保険者、記名被共済者等からその自動車を使用することについて承諾を得ないでとの意味であって、承諾は明示、黙示を問わないが、実際に承諾がされなければならず、運転者が当該自動車に正当な権利を有する者の承諾があると信ずるについて正当な理由があっても本件免責条項の適用は排除されないものというべきである。 
4 被控訴人は、他車運転条項は、一定の範囲で契約者たる人に保険が付帯するものであるが、その人による車の利用であっても、その利用自体が不正な場合にまで保障を拡大することは保障範囲があまりに広くなりすぎてしまうことから限定したものである旨主張する。
他車運転条項は、記名被共済者及びその条項所定の範囲の親族等が被共済自動車以外の所定の条件を満たす自動車を運転中の事故についても共済金を給付するものであるから、属人的な共済契約ということはできるが、そのことを理由に、同様の文言の他の条項や特約の免責事由と別の意味に解釈するのは相当ではない。

弁護士による交通事故の示談・慰謝料増額の無料相談【HOME】へ

一覧へ戻る

  • 交通事故で被害に遭われた方、そのご家族の方へ。
    損害賠償・示談の相談は、無料相談からお問い合わせください。
  • フリーダイヤル0120-980-856
  • 365日24時間いつでも受付中!
    お気軽にお電話ください!

  • 無料ご相談フォームへ