裁判例集
交通事故の損害賠償の裁判例: 大阪地裁H19-2-16
交通事故の裁判例
交通事故の被害者が、MRI検査後、躁状態に陥り、その後うつ状態になり、自殺したケースで、MRI検査後に躁状態に陥った原因については明らかでないとして、交通事故と自殺との間の相当因果関係を認めなかった。
交通事故の裁判例判旨
TがMRI検査後に躁状態に陥った原因については、本件の各証拠をもってしても明らかでないといわざるを得ず、本件事故とTの自殺による死亡との間には相当因果関係は認められない。理由は、以下のとおりである。
前記のとおり、Tは、本件事故により、足の長さが異なるなどの障害を負い、このことをMRI検査以前から気にしており、また、職場になかなか復帰できず、居場所がなくなるのではないかという焦燥感をMRI検査前から抱いており、MRI検査を行う時点で入院期間も長期に及んでおり、これらの各事情はTにとって精神的に大きな負担となっていたものと考えられ、これらの事情がTが躁状態に陥ったことの一因となった可能性は否定できない。
しかし、前記のとおり、TにはMRI検査以前には本件事故から約一年間問題行動はなかったのであり、精神状態の変化は急激なものであるといわざるを得ないところ、前記の各負担が蓄積して突発的に躁状態を発症したことを裏付ける確たる証拠は存在しないといわざるを得ない。
そして、本件において、Tは、MRI検査を機に躁状態を発症しているが、MRI検査が、被検者の精神活動,脳機能等に対して、有害な影響を及ぼす危険性が高く、本件においてその危険性が現実化したと認めるに足りる証拠はない。
以上からすると、Tは、本件事故により後遺障害を負い、就労が困難になったことなどによるストレスが主たる原因となってMRI検査後に躁状態に陥ったとは認められず、また、MRI検査の人体に対する高度の危険性が現実化してTが躁状態に陥ったとも認められず、本件事故とTの死亡との間には、相当因果関係は認められないといわざるを得ない。