裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例: 東京地裁H21-7-14

交通事故の裁判例

休車を要した日は、運転者の休日手当、出張手当、調整手当及び時間外手当の支払いを免れたことが推認されるとして、得られたであろう利益からこれら諸手当を控除して算定した。

交通事故の裁判例判旨

ア 証拠(甲一、四、五、一〇の一から九二まで、一二、乙二、四、証人H)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)原告は、引越運送業等を全国展開しており、全国同一のフリーダイヤルによって顧客からの引越依頼等を受け付けているが、実質は、各支社でエリアが決められ、顧客の発信エリアごとに各支社に電話が振り分けられており、各支社では、収支や配車等につき実質的な独立採算性を取っている。そして、支社間で競争があり、支社の利益で順位を付け、それが給与やボーナスにも反映される仕組みになっている。
(イ)原告において、一年で最も忙しい時期は三月、四月であり、七月、八月がこれに次ぐ忙しい時期である。引越の受注は、引越の二週間前から一か月前に顧客からの依頼があり、見積の上で受注するが、見積をしても必ず受注できるわけではなく、その成約率は三六パーセント程度から五二パーセント程度である。
 売上げをみると、平成一七年では、五月度は四月度の五九・九パーセント程度、六月度は四月度の五三・四パーセント程度、七月度は四月度の六四・一パーセント程度、八月度は四月度の八二・六パーセント程度、九月度は四月度の五九・五パーセント程度であり、営業利益は、平成一七年では、五月度は四月度の一三・七パーセント程度、六月度は四月度の五・四パーセント程度、七月度は四月度の一六・六パーセント程度、八月度は四月度の五一・四パーセント程度、九月度は赤字であった。
 また、平成一八年の五月度の売上げは四月度の六二・四パーセント程度、同年五月度の営業利益は四月度の七・三パーセント程度であった。
 さらに、平成一七年と平成一八年を比較すると、売上げにおいて四月度で一九・三パーセント程度増、五月度で二四・二パーセント程度増、営業利益において、四月度で一一・四パーセント程度増、五月度で四〇・六パーセント程度減となっている。
(ウ)原告車は横浜北支社に属していたが、同支社において、本件事故当時、引越運送車両として保有していたのは、原告車と同様の四トンロングトラック(車格SL。以下「SL車」ということがある。)二台、二トンロングトラック(同K)八台及び一・五トントラック(小型車両:同H)二台の一二台であった。
 なお、横浜北支社は、同じ建物の同一フロアに、東京南支社、横浜支社がある。
(エ)本件事故前の三か月間(平成一八年三月八日から同年六月七日まで。以下「本件事故前期間」という。なお、以下の日付はいずれも平成一八年である。)において、原告車が横浜北支社のために使用されていない日(他支社で使用したものを含む。)は、少なくとも三月一〇日、一二日、二三日、四月五日、七日、五月六日、九日、一〇日(車検)、一一日(車検)、一二日、一四日、一九日(タイヤ交換)、二〇日、二三日、二九日、三〇日、三一日であり、横浜北支社のもう一台のSL車が使用されていない日も、少なくとも、五月八日、九日、一九日、二〇日、二二日、二四日であり、さらに、六月一日から七日までの間は、SL車が一台札幌支社のために使用されている。
 また、平成一八年九月一日から一三日までの間、横浜北支社においてSL車の使用が一台もなかった日が二日あり、同月一四日以降、SL車の使用がなかった日が一日、一台のみ使用の日が四日ある。
(オ)本件休車期間における横浜北支社の保有車両の稼働率は、別表三のとおりである。
(カ)本件事故前期間の原告車の一日当たりの平均粗利は、別表二のとおり、五万六九三三円であると認められる。
(キ)原告は、本件事故前に契約済みの引越作業を断ったことはないことを自認している。
(ク)原告の本件休車期間における売り上げは、前年と比較して八月以外は落ちてはいないが、それは他での稼働率を上げて売上げを上げたことによる。
(ケ)原告車は、平成一一年三月に初度登録された事業用貨物自動車であるところ、その修理に関し、原告が本件事故直後の平成一八年六月半ばころ取得した修理代の見積額は三一五万八三三七円であったが、被告の保険会社から経済的全損であり、一三〇万円程度しか支払えないとされたため、同額以内での修理をしてもらえる業者を探すなどした結果、実際の修理は同年七月三一日に発注し、同年九月一三日に修理完了、納車となった。
イ これらの事実関係から、以下の点を指摘できる。
(ア)本件事故前期間の原告車の一日当たりの平均粗利は五万六九三三円であること。
(イ)しかしながら、本件事故前期間は、引越業者にとって、もっとも繁忙期であり、収益の上がる時期である三月及び四月を含むものであるのに対し、本件休車期間は、第二繁忙期である七月、八月を含むとはいえ、四月度と比較すると、売上げで、七月度が六四・一パーセント程度、八月度が八二・六パーセント程度、営業利益において、七月度は四月度の一六・六パーセント程度、八月度は四月度の五一・四パーセント程度しかないことを考えると、両期間の比較において、これを同等に考えることはできないこと。
(ウ)実質的に独立採算制で動いている横浜北支社における保有車両の稼働状況によれば、三月、四月に比較して、五月は稼働率が低下し、SL車の使用をしていない日や一台あれば足りると考えられる日も見受けられること。
(エ)事故前の契約については、引越作業を完了していること(ただし、比較的余裕がある六月中の作業であると推認される。)。
(オ)本件休車期間における売り上げは、前年と比較して八月以外は落ちてはいないこと。
(カ)しかしながら、横浜北支社では、ほかでの稼働率を上げて売上げを上げたことや平成一八年四月度及び五月度においては、平成一七年同期に比して売上げが二〇パーセント前後増加していること。
(キ)その一方で、平成一八年五月度の利益は、平成一七年五月度より減少していること。
(ク)横浜北支社の成約率は三六パーセント程度から五二パーセント程度であること。
(ケ)原告車の修理は、保険金が経済的全損分しか出ないとされたため、原告の希望により、補填される額に納まる修理をしてくれる業者を探したことにより、すぐに着手できなかったこと。
ウ 以上からすると、原告は、本件事故前に受け付けていた引っ越しを断ったことはないというのであるから、その期間(六月中)においては、支社内あるいは各支社間で何らかの配車調整ができていたとみるべきであるし、本件休車期間中の稼働率を上げられたことは、社内的に配車調整をしたものといえる。
 しかしながら、実質的に各支社が独立採算で活動している原告において、横浜北支社が、他の支社の車両を使用することまでして配車調整をしなければならないとはいえず、引越が、ある程度先の期日を予定して発注することを考えると、決まっている引越をやり繰りでさばくことができたとしても、他支社の営業を妨げて(当該支社としては、SL車を横浜北支社に融通することで、当該支社のエリア内の顧客の需要を満たせないことがありうる。)まで、常時代替車両を確保することは事実上不可能であるというべきであって(同一住所の別支社であっても独立採算性を取っていることからすれば、融通が容易であるとは言い難い。)、車両の稼働状況も考えると、原告には、何らかの休車損害が発生したというべきである。
エ そして、本件事故前期間の原告車の一日当たりの平均粗利は五万六九三三円であるが、同期間の車両の使用状況からすると、これを基準とするにしても、上記のとおり、同期間は最も繁忙期を含むものであり、利益率も高いことが推認されるから、そのまま使用できず、本件休車期間を含む平成一七年六月から九月までの、同年四月に対する売上げ、営業利益の平均比率は、売上げで六五パーセント程度(七月と八月のみでも七三・三五パーセントである。)、営業利益で二〇パーセント弱(七月と八月のみでも三四パーセントである。なお、九月度は営業利益〇円として計算している。)にすぎないこと、平成一八年は、平成一七年に比較して、売上げは増加しているものの、必ずしも利益は増加していないこと、車両の使用状況は年度で必ず同様であるとも言い難いことや成約率上SL車が必要であったと直ちにはいえず、稼働率(これも必ずしもSL車が使用されていると言い難い。)や利益状況などを考えると、必ずしも原告車がないことで、原告が引越の仕事を受けられず、原告主張の利益を上げられなかったとは言い難いことなどを総合し、民事訴訟法二四八条の趣旨も含めて判断すると、本件における休車損害を算定する際の基準額としては、一日当たり二万三〇〇〇円とするのが相当である。
オ ところで、原告は、本件休車期間を、本件事故の日である平成一八年六月七日から修理が完了し、納車された同年九月一三日までの九九日間と主張しているが、上記ア(ケ)のとおり、修理に要した期間は同年七月三一日から同年九月一三日までの四五日間であることに加え、修理のための入庫まで時間を要したのは、原告車の時価(経済的全損として一三〇万円程度。)以上にかかるとされた同年六月半ばころの修理代見積に対し、原告が上記填補金額内で修理をしようとして、そのような修理工場を探していたことにあるというべきであって、修理の入庫は、通常であれば事故直後であり、上記事情を考慮しても、そのための期間分を被告が全部負担すべきいわれはないから、修理着手までの相当期間としては、同年六月いっぱい(同月三〇日までは二三日間、見積後でも約二週間ある。)とするべきであり、上記修理期間と合計すると、六八日間が相当期間であるといえる。
カ よって、原告の休車損害は、二万三〇〇〇円に六八日間を乗じた一五六万四〇〇〇円となる。
 なお、原告は、休車期間を削るのであれば、修理代として三一五万八四四七円を認めるべきであると主張するが、上記の検討によれば、経済的全損の場合、原告の損害額は一三〇万円程度であるから、原告車の時価を超える修理費を認める余地はなく、また、その場合には休車損害としても、本件事故から発注の期間に制限されることになるから、原告の主張を採用することはできない。

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