裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:福岡高裁H16-2-26

交通事故の裁判例

交通事故の被害者に生じた後遺障害はPTSDには該当しないが、事故に起因して生じたものと推認することができるとした。

交通事故の裁判例判旨

本件事故後、一審原告に生じた後遺障害はPTSDに該当するものとは認められず、また、一審原告には器質的な障害も認められないものの、そのことから、直ちに現実に一審原告に生じている障害と本件事故との間に因果関係がないものということはできない。
 すなわち、本件事故後、一審原告には、前記認定のとおり、微熱、いらいら感、めまい、不眠、吐き気、抑うつ感等が生じ、その結果、家事労働に支障を来たす状態が生じているところ、かかる障害は、本件事故後の比較的早期から継続的に生じていたものであるとともに、本件事故以外の事象がその原因となっていることをうかがわせる証拠も認められないことからすると、上記障害は本件事故に起因して生じたものと推認することができ、これを覆すに足りる証拠はない。
 そこで、上記後遺障害による一審原告の労働能力の喪失率を検討するに、前記のとおり、専業主婦である一審原告は、現状では十分な家事労働を行い得ていないものと認められ、また、自殺未遂に及んだことも複数回あるなど、その状態は決して軽いものということはできないが、他方において、一審原告の後遺障害はPTSDであるとは認められないうえ、一審原告も認めるように、症状固定後、タクシーに乗って昼食用の弁当、パンなどの出来合のものを購入するために外出していたこともあるなど、器質的には一審原告は家事労働に服することが可能な状態にあるものと認められることなどに加えて、前記認定の諸事実を総合すると、一審原告の後遺障害は、九級一〇号の「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」として、その労働能力の三五パーセントを喪失したものと認めるのが相当である。
 そして、Tの陳述書によれば、一審原告が退院してから既に四年以上が経過しているものの、その状態には特に変化がないという一方、証人Nは、一審原告の症状の治癒について、コントロールの仕方の習得の学習がうまくいけば、治癒は可能だと感じており、気持ちの整理の仕方を学習でき病状が回復していった後には徐々にではあれ労働能力も獲得していくことができると感じている旨証言していること、前記認定のとおりの一審原告の一審被告に対する対応や病状の経緯などからすると、一審原告は、一審被告に対する憎しみの強さから、自分が病気であることが一審被告に対する一種の制裁であるという考えを持ち、それが一審原告の症状の軽快を遅らせている面もうかがわれるところ、本訴を通じて一審被告の責任が確定することにより、その状況に変化が生じる可能性も否定できないこと、乙七〇の文献によれば、三年以上経過しても、まだなおPTSDと主張する場合は、おそらくPTSDは既に消失し、別の疾患である外傷後神経症、補償が絡む神経症や他のパーソナルな部分に寄与した個体要因が大きい疾患に変化していると考えるとの見解も示されていること、本件事故後既に五年以上が経過していることに前記のとおりのI病院心療内科の各医師の診断内容などを総合すると、本件事故との間に相当因果関係の認められる一審原告の労働能力喪失期間は一〇年間と認めるのが相当である。

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