裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:神戸地裁H22-12-7

交通事故の裁判例

被告の素因減額の主張を採用しなかった。

交通事故の裁判例判旨

 被告は、医師の意見書(乙一、七、八)において、概略、「手指の関節可動域は、他動的には正常に近いこと、CRPSに伴う関節拘縮は、あくまで他動でも関節が動かないものが見られること、CRPSの筋力低下は、神経原性で日々変化するものではなく、永続的なもので、さらに筋萎縮、骨萎縮が著明であること、星状神経節ブロックや腕神経叢ブロックが効果があるが、原告の症例では効果がないことにより、CRPSは否定的であること、原告の病名は、転換性障害または身体表現性疼痛障害の方が適切であること、他動的な関節可動域の制限が小さく、骨萎縮もみられないこと」などが指摘されていることから、本件事故による原告の後遺障害が、自覚的な痛みを中心とした、局部に頑固な神経症状を残すもの(後遺障害等級一二級三号)に該当するのが上限である旨主張する。
 そして、前記のとおり、自賠責の認定においては、「左上肢、手指部の骨萎縮は判然とせず、提出の写真においても皮膚の変化が健側と比較して明らかに認められるとは捉えられない」などとされているところ、被害者の迅速な救済のために定型的な基準を必要とする自賠責の認定においては、骨萎縮を要件とすることは理解できる。さらに、症状の診断には、客観的な医証により認定することが可能な骨萎縮、筋萎縮などを重視すべきであって、一般的に骨萎縮は長期間動かさないでいると生じるものであると考えられること、交感神経ブロックによる痛みの抑制は不明瞭とされていること(甲二〇)などから,原告の症状には、通常のCRPS(RSD)とは異なる所見があることは否定することができない。
 しかしながら、前記認定の症状固定時の原告の症状やその後の症状、担当医等の診断内容、各種検査結果などに照らすと、原告には、本件事故による軽度の外傷により強度の疼痛が持続し、筋力低下などの障害や、発汗、皮層温度の異常、皮層の変色などがみられる。 
 また、CRPS(RSD)は、いわゆる神経麻庫ではないため、自動的な関節可動域と他動的な関節可動域の差が出てくることはなく、原告の症例では自動的な関節可動域と他動的な関節可動域の差が大きく、CRPS(RSD)にみられる関節拘縮とは考えにくい、関節拘縮は正確に測定することが困難であるとの指摘があること(乙八)、関節可動域制限の存在を裏付ける器質的損傷や画像等の医証は認められないことなどをいうことができるものの、原告の関節可動域制限については、前記左肩・左肘・左手指の関節可動域(自動・他動)の測定結果(甲三五)によると、〔1〕左肩関節の屈曲及び外転は、自動・他動ともに正常値の二分の一以下に制限されていること、〔2〕左肘関節の自動・他動での可動域の測定値は、自動関節可動域の合計は八〇度であり、また、原告の他動関節可動域の合計は一〇〇度であり、正常値の四分の三以下に制限されていること、〔3〕左手関節の可動域の測定値は、自動・他動ともに、正常値の二分の一以下に制限されていること、〔4〕左手指関節の可動域については、左手の五指について自動では動かすことができない状態にあるものの、左手の五指の各関節について、他動による場合の可動域は正常に近い結果が出ていることなどがうかがわれる。
 さらに、原告の左上腕部は周囲二六・三センチメートルであるのに対し、右上腕部は周囲三〇センチメートルであったこと(原告本人)、本件事故後の症状で就労可能な職場を見いだすことが困難な状況にあること、原告は、毎日、左手指から左肩、首の部分のひどい痺れや疼痛に悩まされ、特に、調理、洗濯、掃除などの家事は娘の助けを借りて行い、一人でこなすことができない状況であることなどが認められる。
 上記に加えて、前記認定の治療経過や前記CRPSの診断基準等に照らすと、原告の前記症状がCRPS(RSD)の診断基準等を満たしていることは否定することはできないし、ギボンズのRSDスコア表(甲二〇)なども基準以上であること、原告の担当医であるJ医師、R医師もRSD・CRPSに罹患したとの診断をしていること(甲五、六、二八など)、本件事故前には原告に上記症状の発症の体質的要因はなく、本件事故が発症の契機となったことを否定し難いことなどを総合すると、原告には、本件事故後から継続している前記症状による後遺障害が残存する状況にあり、既に治療しても改善が見込まれない状況にあるということができる(もっとも、原告の前記症状が後遺障害等級九級一〇号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することが出来る労務が相当な程度に制限されるもの」・一三号「一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの」に該当する程度のものであるとまで認めるに足りる証拠はない。)。そして、その疼痛等も影響して、左肩・左肘関節について、関節の機能に障害を残すものと評価することができ、これに原告の前記症状を総合すると、本件事故により、原告に後遺障害等級一〇級に該当する程度の後遺障害を負ったものとして評価することが相当である。上記認定に反する当事者の主張は、前記認定事実等に照らし、採用することができない。

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