裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:東京高裁H14-6-26

交通事故の裁判例

自動車事故の加害者・被害者間の訴訟において事故と相当因果関係が認められ加害者が負担すべき弁護士費用は、自家用自動車総合保険契約の無保険車傷害条項に基づく保険金支払の対象となると判断した。

交通事故の裁判例判旨

   ア 弁護士費用が無保険車傷害保険の保険金支払の対象となるかどうか。
 本件総合保険契約の無保険車傷害条項一条一項には、控訴人会社は、被保険自動車(被害車)に搭乗中の者(被保険者)が、無保険車の所有、使用又は管理に起因して生命身体等が害された場合には、それにより被った被保険者又はその父母らの損害(この損害の額は同条八条に定める損害の額をいう。)について、賠償義務者がある場合に限り、無保険車傷害条項及び一般条項に従い保険金を支払う旨、同条項八条一項には、控訴人会社が支払うべき損害の額は、賠償義務者が被保険者又はその父母らが被った損害について法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額によって定める旨規定されている。これらの条項からすると、控訴人会社は、被控訴人らが本件事故により被った損害について、「賠償義務者が法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額」を無保険車傷害保険金として支払うこととされているのであるから、被控訴人Iの弁護士費用が本件保険金の支払の対象となるかどうかは、この「賠償義務者が法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額」に被控訴人Iの弁護士費用が含まれるかどうかによることとなる。ところで、交通事故(不法行為)による被害者の損害については、賠償義務者(加害者、本件の場合は控訴人B山)は、交通事故(不法行為)と相当因果関係のある被害者の損害を賠償する責任を負うべきものとされており、上記条項の定める「賠償義務者が法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額」とは、要するに、「賠償義務者が賠償責任を負うべき交通事故と相当因果関係のある損害」を意味するものと解される。そうすると、被控訴人Iの弁護士費用についても、控訴人B山に対する訴訟(いわゆる責任訴訟)において、本件事故と相当因果関係があると認められる控訴人B山が負担すべき弁護士費用については、本件保険金の支払の対象となるとするのが相当である。
 控訴人会社は、無保険車傷害条項九条、一〇条には、被保険者が、一般条項一四条六号に規定する権利の保全又は行使に必要な手続をするために控訴人会社の同意を得て支出した費用は損害の一部として無保険車傷害保険金の支払の対象となる旨、一般条項一四条六号には、他人に損害賠償の請求をすることができる場合には、その権利の保全又は行使に必要な手続をすることと定められていることからして、被保険者(本件の場合は被控訴人I)の賠償義務者(本件の場合は控訴人B山)に対する損害賠償請求訴訟の提起は、上記の損害賠償請求権の保全又は行使に必要な手続の典型であり、その弁護士費用はこの手続費用に該当するというべきところ、本件においては、弁護士費用の負担について控訴人会社の書面による同意がないから、控訴人B山に対する訴訟の弁護士費用を本件保険金の支払の対象とすることはできない旨主張する。
 しかし、上記の手続費用に弁護士費用が含まれるかどうかはその文言上必ずしも明確ではない。同様の規定の置かれている本件総合保険契約の対人賠償保険に関する賠償責任条項によると、一般条項一四条六号の権利の保全又は行使に必要な手続をするために要した費用とは別に損害賠償に関する争訟について、被保険者が控訴人会社の同意を得て支出した訴訟費用、弁護士報酬などの費用が定められていて(賠償責任条項一〇条二号、五号)、これらの規定によれば、一般条項一四条六号の手続費用と損害賠償請求訴訟の弁護士費用とは別の費用とされており、同じ総合保険契約約款上の規定であることからすると、上記の無保険車傷害条項における一般条項一四条六号の手続費用には弁護士費用は含まれないと解することも可能である。また、そもそも、交通事故と相当因果関係のある損害を保険金支払の対象としているにもかかわらず、同じ相当因果関係のある損害から弁護士費用を除くというのは約款の解釈上も合理的とはいえない。
 次に、控訴人会社は、無保険車傷害条項八条二項には、控訴人会社が支払うべき損害の額は、被保険者(保険金請求権者)と賠償義務者との間で損害賠償責任の額が定められているといないとにかかわらず、控訴人会社との間の協議などで決する旨定められていることからして、控訴人会社に対する無保険車傷害保険金の請求には、賠償義務者に対する訴訟の提起は一般に不要というべきである、また、本件の場合、控訴人B山は資力が乏しいから、同控訴人に対する訴訟の提起は無意味といってよく、同控訴人の応訴は多分に形式的、名目的であり、訴訟における攻撃防御は専ら控訴人会社の負担と責任で行っていることからすると、本件のような場合に控訴人B山に対する訴訟の弁護士費用を保険金支払いの対象とすることは、その実質は、控訴人会社に対する保険金請求訴訟(いわゆる保険訴訟)の弁護士費用を保険金支払いの対象とするのに等しくいかにも不合理であり、このような結論を承認すると、賠償義務者に対する無用の訴訟提起を誘発することになり、上記条項で賠償義務者に対する損害額の確定と切り離して保険金を請求できるとした約款の趣旨に反するものであると主張する。
 控訴人会社の主張するとおり、無保険車傷害条項によれば、被保険者が同保険金の支払を請求するには、賠償義務者との間で損害額の確定は要せず、その確定の有無にかかわらず、保険会社に対し直接保険金の請求ができるとされている。しかし、賠償義務者が損害額を争う以上、その支払能力の有無にかかわらず、被保険者としては、損害賠償請求権の時効消滅や将来における賠償義務者の支払能力の回復の可能性などを考えて、賠償義務者に対する訴訟を提起し、損害額を確定しておく必要がないとはいえず、保険会社に対し直接保険金の請求ができるからといって、そのことから直ちに賠償義務者に対する損害賠償請求訴訟の提起が不要になるとまではいえない。現に、本件の場合も、控訴人B山は、損害額を争い、応訴しているのであるから、同控訴人に対する本件訴訟の提起が不要といえないことは当然である。
 したがって、控訴人会社の主張は、いずれも採用することができない。

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