裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:東京地裁H20-1-30

交通事故の裁判例

交通事故の加害者に対して、自動車の購入資金の関係で所有名義を貸しているだけの者につき、運行供用者責任を否定した。

交通事故の裁判例判旨

(1)自賠法三条において、自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずるものとされているところ、同条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者とは、自動車の使用について支配権(運行支配)を有し、かつ、その使用により享受する利益(運行利益)が自己に帰属する者を意味するものというべきである。
 そして、自動車事故により人的損害を受けた被害者の保護を図るという自賠法の目的(同法一条参照)に照らせば、運行供用者の運行支配は、必ずしも、当該自動車の運行に対する直接的、具体的な支配の存在を要件とすることを意味するものではなく、諸般の事実関係を総合した結果、社会通念上、すなわち、客観的、外形的に見て、自動車の運行に対し支配を及ぼすことのできる立場にあり、運行を支配、制御すべき責務があると評価される場合には、その運行支配が肯定されるべきものと解すべきである。また、運行利益の帰属についても、必ずしも、現実的、具体的な利益の享受を意味するものではなく、諸般の事実関係を総合し、これを客観的、外形的に観察して、法律上又は事実上、何らかの形でその者のために運行がなされていると認められると評価される場合には、その運行利益が肯定されるべきものと解すべきである。
(2)これを本件について検討するに、証拠(甲二〇の一)によれば、本件事故当時、被告車の登録事項等証明書上の所有者は被告会社であったことが認められる。
 しかしながら、証拠(乙一、乙五の二及び三、乙七、八、一〇、一一)によれば、本件事故前の平成一六年八月中旬ころ、訴外Jは、訴外Bに対し、被告車の売却の仲介を依頼したこと、被告会社は、同年九月一六日、被告車に付保していた事業用総合自動車保険を解約したこと、訴外Bは、同年九月末ころ、訴外K(以下「訴外K」という。)に被告車を六〇万円で売却し、同金員を訴外Jに渡したこと、訴外Kは、被告車をコインパーキングに駐車し、同車の鍵は訴外Kとその運転手が主に所持していたこと、被告Oが訴外Kに無断で被告車を運転し本件事故を起こしたことが認められる。
 そして、被告Hは、本件事故当日、警察官に対し、被告会社が被告車を購入後、被告車は主に被告Hの長男である訴外Jが使用していたこと、訴外Jが、被告Hの知らない間に被告車を譲渡してしまい、そのときは仕方ないと思っていたが、平成一六年九月初旬に、訴外Bから、被告車の名義変更に必要な書類の作成を依頼され、住所氏名を記載し押印したこと、その後、名義変更するのであれば任意保険も解約しようと思い、同月中旬ころに解約の手続きをしたこと、その後、本件事故の約二週間前に訴外Bに名義変更の有無を確認し、まだしていないということだったので、早く名義変更するよう催促した旨供述しているところ、上記供述は、事故当日に警察官の面前でなされたものであること、自動車保険の解約等、上記認定した事実とも一致しており、信用することができる。
 そうすると、被告車の所有者である被告会社の代表者である被告Hが、訴外Jから被告車の売却を依頼された訴外Bから被告車の名義変更に必要な書類の作成を依頼され、これに応じた平成一六年九月初旬に、訴外Jによる被告車の第三者への売却を追認したものと認められること、被告会社は、被告車の第三者への売却を前提に被告車に付保されていた自動車保険を解約していること、被告Hは名義変更に必要な書類の作成に協力し、さらに、名義変更の督促もしており、売主としての義務を果たしていること、遅くとも同年九月下旬には訴外Kに被告車が引き渡され、鍵も含めて訴外Kが被告車を管理していたことが認められ、本件事故発生の時点においては、客観的、外形的に見れば、被告会社は、既に被告車の運行支配及び運行利益を有していたものと評価することはできないというべきである。
 したがって、被告会社は運行供用者として自賠法三条の責任を負わないというべきであり、被告会社に対する原告の請求は理由がない。
(3)そして、上記認定のとおり、被告Hは、被告車の所有者ではなく、本件事故当時、客観的、外形的に見て、自動車の運行に対し支配を及ぼすことのできる立場にはなく、被告Hのために運行がなされているとも認められないことから、運行供用者として自賠法三条の責任を負わないことは明らかというべきであり、被告Hに対する原告の請求は理由がない。

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