裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:東京地裁H11-5-11

交通事故の裁判例

事故車両の登録は被告名義であったが、交通事故の前に第三者に売却され引渡されていた場合に、被告は運行支配を有しなかったとして、自賠法3条の運行供用者責任を否定した。

交通事故の裁判例判旨

一 前記のように本件事故車両の登録名義が被告名義であったことから、原告らは、被告に対して自賠法三条の運行供用者責任に基づく賠償を求めている。これに対して、被告は、本件事故車両は平成五年五月三一日に金五〇万円で売却し、同日に引渡しをしたもので、運行供用者には当たらないと主張している。
二 本件事故車両については、その売買契約は、時期に関するCの供述ははっきりしないものの、その存在自体は争いがなく、被告とCとの間に売買契約が成立し、これに基づいて車両が引渡された事実を認めることができる。これによれば、原則として被告には運行支配を認めることはできない。なお、原告らは、氏名不詳者に対して売買したことについて、名義書換を意図しない無責任な売買行為であると非難する。確かに、この点は、被告本人尋問でも、外国人である買主が誰かほかの日本人の名義にするつもりであったことを知って売買したことを認めており、このこと自体、ある意味で無責任な態度といえなくもない。しかしながら、この事実は、被告の運行支配を基礎付ける事実とは評価し得ない。
三 本件事故車両の登録名義は、平成四年一〇月五日に被告名義となって、事故に至っており(乙第六号証)、また、被告が同年九月二九日に任意保険契約を締結していることから(乙第八号証)、被告本人尋問の、当初は自己の息子に使用させていたが、その後、売却したとの証言は、この限りでは信用できる。したがって、登録名義については、Cが本件事故車両を買受ける際に、名義を貸与した事実は認められず、売却した後に登録名義が残っていたに過ぎないものとしか認められない。なお、原告らは代金の一部(五〇万円のうち二〇万円のみ)支払われたに過ぎないことを指摘するが、これも売買契約が成立し、既に引渡しも完了している本件においては、被告の運行支配を基礎付ける事実とは評価し得ない。
四 さらに原告らは、被告は、Cを実質的に雇用していたものであり、同人が無免許であること等の事実を知っていたことが考慮されるべきであると主張する。被告がCを雇用していた事実を認定すべき証拠としては、Kの証人尋問の結果、同人の陳述書(甲第七号証)、Nの陳述書(甲第一六号証)及びCの帰国後の供述を録取したビデオテープ(甲第二七号証)がある。しかし、Cの勤務先については、原告らは、当初、地番等を特定して、宇都宮市内にある「P」というタイレストランであると主張しており、この点、Kの陳述書及びNの陳述書・(甲第七号証、第一六号証)によれば、取調警察官や同僚のタイ人女性に詳しく聞いたとされていたものである。それが最終的には、埼玉県内にあったという主張に変わっている。しかし、Cは埼玉県から来たことについては事故当初から述べており、また、K、Nの陳述書(甲第七号証、第一六号証)によれば、被告も事故直後はCを雇用していたことを否定していなかったというのである。これからすると、このように店の所在地に関する主張が変わることは不自然であるというべきで、これは、事故後に被告から、右両名に対して、Cが勤務していた店の話があったことについて疑いを抱かせるものといわざるを得ない。また、この店が、埼玉県内にあったとして、その場所などは明らかにされていない。Cは、埼玉県内にある店に勤務し、被告がこれを経営していた旨を帰国後に供述しているが(甲第二七号証)、右のように、これを裏付ける事実がないばかりか、他の供述者の供述の信用性にも疑いのある本件においては、この供述のみで、被告が埼玉県において実質的に店を経営し、そこでCを雇用していたと認定することはできない。
五 以上の事実を総合すれば、被告の自賠法三条の運行供用者責任を認めることはできず、また、それと同時に、民法七一五条の使用者責任を基礎付けるべき被告とCとの間の雇用関係も認めることはできない。したがって、その余について判断するまでもなく、原告らの請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用について民事訴訟法六一条に従い主文のとおり判決する。

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