裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:東京地裁H19-7-23

交通事故の裁判例

RSDの後遺障害の程度について、自賠責により後遺障害等級12級12号該当の認定を受けた被害者につき、軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛であると認め、67歳まで、56パーセント程度の労働能力を喪失したと認めた。

交通事故の裁判例判旨

(4)左上肢のRSDによる後遺障害の程度について
 原告は、身体障害の程度について、左上肢機能障害につき等級三級と判断されていることに加え、前記認定事実のように、左上肢の激痛を除くため左胸部交感神経節切除術を受け、その後もブロック療法を受けていたが、激痛が再び持続するようになって、鎮痛剤も併用するようになり、症状固定後も、多摩永山病院のみならず武蔵野病院にも通院してブロック療法を受け、両病院で診療を担当しているU医師は、治療の頻度について、「(週に)最低三日で、多いときは四日、五日になっていると思います」と証言しており(証人U秋男調書八頁)、証拠上、正確な通院回数は完全には明らかでなく、症状固定後常に同医師が証言するような頻度で治療を受けていたとは認められないにしても、前記認定事実によれば、かなりの頻度で治療を受けていたことが認められるのであって、一回の治療において、五か所に局所麻酔薬を注射しなければ効果を期待できない状況にあり、原告が受けている治療がRSDの治療として相当性を欠くとまで認めるに足りる証拠もないことなどを総合考慮すると、症状固定時における原告のRSDによる疼痛の程度は、もはや通常の労務に服することができる程度のものということはできず、軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛であると認められる。
 なお、原告の左上肢は、症状固定時、ブロック療法や鎮痛剤の効果で、完全に拘縮するまでには至っておらず、軽い物を持つことができ、車の運転もすることができることからすると(丙一〇から一四、証人U)、左上肢の用が全廃したとまでは認められない。また、原告は、左上肢につき、「特に軽易な労務以外の労務に服することはできない」とも主張するのであるが、RSDの場合、激しい痛みのために動かすことができず、その結果、筋萎縮が進行し、廃用状態となることがあるが、後遺障害の等級認定においては、「一上肢の用を全廃したもの」と「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」が同程度に取り扱われていることに照らすと、原告の左上肢が全廃状態とまでは認められない以上、労働能力の喪失率を判断するに当たっては、「特に軽易な労務以外の労務に服することはできない」状態にあると認めることは相当でない。
 他方、参加人は、自賠責保険の認定結果を踏まえて、一二級相当であると主張するが、同認定結果は、MRI検査や単純レントゲン検査等客観的資料の提出を受けることなく、判断されたものである。RSDによる筋萎縮、骨萎縮の程度を判断するに当たって、MRI検査等の画像所見が有用であることは否定できないが、自賠責保険における等級認定においてはともかく、損害賠償の算定においては、これらがないからといって、RSDによる労働能力の喪失は一二級(一四%)程度であると判断することは相当ではない。また、H医師は、原告の労働能力の喪失率は一四級一〇号相当であると述べているが(丙七)、当事者間において、原告の左上肢がRSDであることについては争いがないところ、同医師はそもそもこの点について決定的根拠はないとしていることからすると、その前提からして、同医師の意見は採用することができないところである。
(5)左上肢以外の後遺障害について
 原告は、左下肢も左上肢と同様にRSDであり、その程度は一二級一二号に該当すると主張するが、T医師は、後遺障害診断書(甲二)に、左下肢につき知覚鈍麻、脱力と記載するにとどまり、RSDと確定診断をするには至っていない(甲一三)。また、U医師も、RSDであると考えているものの、遅れて生じた症状であることから、医学的にも議論があり、診断する人によっても意見が分かれるところである旨述べている(証人U調書二三頁以下)。したがって、本件事故によって左下肢にもRSDが生じたと認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。
 このほか、原告は、後遺障害として、解離性健忘症、うつ病、左難聴、左耳閉感、左手皮膚症状等も主張しているが、仮にこれらの症状が将来において回復の見込みのない後遺障害に該当するとしても、左上肢のRSDによって認められる労働能力の喪失程度に影響を与えるような後遺障害であるとまで認めるに足りる証拠はない。
(6)以上により、原告は、本件事故による後遺障害によって、労働能力を五六%程度喪失したものと認められる。
 そして、RSDという後遺障害の内容や、これまでの治療状況、上記の労働能力喪失率に照らすと、労働能力喪失期間は症状固定時の年齢からの就労可能年数と認めるのが相当である。

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