裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:東京地裁H17-11-30

交通事故の裁判例

原告のPTSDは、後遺障害等級では12級程度に該当するものであり、PTSD以外の後遺障害等と総合すると原告の後遺障害等級は併合12級に相当するとした。

交通事故の裁判例判旨

(2)PTSDの残存と程度について
ア 原告が本件事故を原因とするPTSDに罹患した旨の診断を受けたことは当事者間に争いがなく、また、原告のPTSDという診断の妥当性は、被告提出の意見書(乙一)によっても裏付けられている。すなわち、PTSDの診断に当たっては、DSM―〈4〉の診断基準(乙四、別紙)の示す、〔1〕自分又は他人が死ぬ又は重傷を負うような外傷的な出来事を体験したこと、〔2〕外傷的な出来事が継続的に再体験されていること、〔3〕外傷と関連した刺激を持続的に回避すること、〔4〕持続的な覚醒亢進状態にあること、の要件をみたすかどうかを検討すべきところ、
〔1〕本件事故の態様は、前記第二の二(1)のとおりであり、要するに、原告が被告を救助しようとしていた際、突然その車両が発進し、約二〇メートル引きずられた上、対向車との間で原告がはさまれる形となって受傷したというものであって、実際の受傷の程度は重傷とまではいえないものの、事故の状況からすると自分が死ぬ又は重傷を負うような出来事であったといえ、また、強い恐怖を感じたと考えられるので、〔1〕外傷的な出来事の要件はみたす。
〔2〕症状固定時までの原告の症状は、前記(1)イないしオのとおり、救急車(サイレン)の音に不安や動悸を訴えたり、寝ていても誰かに見られている感じを訴えたり、車がぶつかってきてハッと目覚めたり、ドンと来るような衝撃を訴えたり、事故のことが頭から離れられないと述べたりしており、〔2〕再体験症状の要件も認められる。
〔3〕本件事故後、それまで従事していた看護助手の仕事を休業し続け、平成一五年七月には退職し、その後も就職はしておらず(甲一七、二七、証人甲野)、家事も手に付かないことがあり、車に乗ることを拒否したり、「どうして私だけ…ずっとまじめにやってきたのに私の人生が」と将来を悲観する言動を見せたり、希死思慮もみられ、「この脳みそから記憶を取ってくれという感じ」と述べたりするなどしており、〔3〕回避症状の要件もみたす。
〔4〕原告は、しばしば不眠又はすぐに覚醒してしまうこと、感情失禁、人間関係でのイライラ等を訴えており、〔4〕覚醒亢進症状の要件もみたす。また、上記〔2〕ないし〔4〕の症状は、少なくともOクリニック通院中、O病院入院中の一か月以上持続し、臨床的に著しい苦痛を呈しており、また、休職を余儀なくされている。したがって、原告が本件事故によりPTSDに罹患したことは明らかである。
イ ところが、被告は、原告のPTSDについて、症状固定後順調に回復・改善したと主張する。
 確かに、前記(1)のとおり、症状固定後、「他人と話そうという意欲が少し出てきた。」と述べ、それなりに安定した様子を見せたこともあり、気分の良いときには夫とともに散歩することもあったことが認められる。しかし、その後現在に至るまでの間にも、診断書及び主治医の意見書によれば、離人症状(何をやっても現実感がない)、救急車のサイレンに対する動悸・過換気発作・もうろう状態(それまでしていた動作が停止し、救急車を目で追う)、失禁、希死思慮は続いており、職場復帰もできず、家事もままならない状態で、日常生活に家族の手助けを要する状態であることが認められ、前記〔2〕ないし〔4〕の症状は続いているというべきであるし、主治医も、原告のPTSDが回復ないし寛解したとは認めていない(甲一六、二一、二三)。原告の症状遷延要因の一つとして本件訴訟の係属に伴う精神的苦痛も考えられ(甲二一)、訴訟の終了とともに回復傾向を示す可能性はあるとしても、現在までの間に症状が改善したとは認められないので、原告には本件事故によりPTSDの後遺障害が残ったというべきである。
ウ そして、前記(1)の事実に照らすと、原告の症状は、生活や仕事に積極性ないし関心をもつことが困難な状態にあり、仕事には就いておらず、着衣等に夫の介助を要することもあることがうかがわれるが、他方、夫が仕事のため外出中の日中は一人で過ごしており、夫の手助けを得てコンロにやかんを掛けることなどもしており、また、気分の良いときには夫とともに近所を散歩したり庭いじりをしたりしていることが認められる。
 したがって、少なくとも、意欲の低下等により仕事には行けないが、身辺日常生活を概ねできるもの(平成一五年八月八日付け厚生労働省労働基準局長通知「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」・甲二六参照)として、PTSDとしては中等度、後遺障害等級では一二級相当に該当するものというべきである。ただし、現在の原告の日常生活能力・程度、他人との意思伝達、対人関係ないし協調性、身辺の安全保持、危機回避、困難への対応能力等の状況については、夫の供述により判断するほかはなく、鑑定の実施も困難な状況にあるので、これを上回る後遺障害であることを裏付ける資料の提出がなく、原告の主張する後遺障害等級七級であることを認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。

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