裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:東京地裁H17-10-25

交通事故の裁判例

原告の交通事故による症状について、PTSDの症状を呈していたと認めたが、後遺障害の等級としては、14級10号を超える等級は認めなかった。

交通事故の裁判例判旨

二 原告の後遺障害の有無・程度、特にPTSDについて
(1)原告の本件事故による後遺障害に関しては、前記のとおり、頚椎捻挫に伴う「頚部疼痛、運動時痛」、腰椎捻挫に伴う「腰部疼痛、運動時痛」及び「不安、うつ状態、パニック症状等」の外傷性神経症につきそれぞれ一四級一〇号、併合一四級との後遺障害の事前認定がなされている。
(2)そこで、原告の本件事故後の精神症状がPTSDの診断基準を満たすか否かについて検討する。
 原告は、平成一三年九月二二日から同一四年九月二日までS内科クリニックにおいて精神・神経症状について治療を受けているところ、S内科クリニックにおけるカルテ(乙三)によれば、フラッシュバック、生々しい記憶、繰り返し見る夢、車の運転ができない、事故の話ができない,焦燥感、過度のストレス反応等から、PTSDに近い状況になっており、ただ、事故に関して並はずれた脅威や破局的なストレスを伴う状況かは不明であり、事故の重大さがICD―一〇に適合しているかはっきりしないため、診断名としては、「外傷後神経症、うつ状態」とされている(一九、二〇、二五~二八頁)。そして、原告は、更に治療を継続するためTメンタルクリニックに転医したこと(甲一四)、TメンタルクリニックのH医師の診断書(甲六)によれば、外傷的事象への暴露、外傷的事象の再体験、外傷関連刺激の持続的回避と全般的反応性麻痺、持続的覚醒の亢進、障害の持続時間、社会的、職業的またはその他の重要領域における機能障害、精神症状の発症時期(交通外傷による心的外傷の後二か月以内に発症していること)等について検討のうえ、PTSD診断の国際基準(ICD―一〇)を満たしていると判断していることが認められる。以上の事実と、前記のとおり、原告は本件事故当初から事故による精神的ショックが大きかったことを総合考慮すると、原告の症状は、診断名が付けられたのは相当遅かったものの、PTSDの症状を呈していたと認めることができる。
 なお、症状固定後の同年一〇月九日から同月一三日まで入院したI病院においては、「神経症性障害」であると診断されているが(甲七、乙五)、これは五日という短期間の入院に限った診断名であること、また、後遺障害の事前認定においては「不安、うつ状態、パニック症状等」は受傷態様及び治療経過から外傷性神経症と捉える見解が示されているが(甲一〇)、後遺障害の事前認定のために提出された後遺障害診断書は前記S内科クリニックの「外傷後神経症、うつ状態」の診断名が記されたものであること(乙三)を考慮すると、これらの事実が前記認定を覆すに足りるものとはいえない。 
 また、被告らは、原告の精神症状について、心的外傷以外の要因として、上司からのセクシュアルハラスメントや家族内での精神的問題を指摘するが、これらが原告の症状にどの程度影響を与えたかについては、的確に認めるに足りる証拠はないから、被告らの主張は採用できない。
(3)原告は、PTSDを理由に後遺障害等級は九級一〇号とすべきである旨主張し、原告には精神的な障害が現れており症状が重い旨の原告の母親の陳述書(甲一四)がある。
 しかし、原告の症状はPTSDの症状を呈していたと認めることができたとしても、後遺障害の事前認定においては症状固定時(精神・神経症状については平成一四年九月二日。乙三の二五・二六頁)までの症状に基づいて実質的に判断されていること等、前記認定の諸事実を総合して判断すると、原告の本件事故による後遺障害の等級としては、一四級一〇号と認めるのが相当であって、これを超える等級を認めるに足りる的確な証拠はないといわざるを得ない。

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