裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:東京地裁H10-11-4

交通事故の裁判例

源泉徴収を受けておらず確定申告もしていない被害者の休業損害について、賃金センサスを基礎に算定し、損害を認めた。

交通事故の裁判例判旨

(一)本件事故当時の収入について
(1)証拠(甲二一、証人S、原告本人)によれば、まず、次の事実が認められる。

原告(昭和三六年一月七日生まれ)は、本件事故当時、Sが経営する居酒屋「M」東村山店の店長をしていた。同店は、昭和五八年一一月一九日に開店したフランチャイズチェーン店である。原告は、昭和五四年に、Sが経営していたレストラン喫茶Sでアルバイトとして働くようになった。Sは、レストラン喫茶Sを辞め、開店当初から、原告を店長に据えて「M」東村山店の経営をしていた。本件事故当時、同店には、アルバイトで約一〇人ほどの従業員のうち、常時七、八人が店舗に出ていた。原告は、仕入れ、接客、調理、アルバイトの管理、帳簿の記載等のあらゆる仕事をしていた。

(2)原告は、Sとの間において、当初から、収入として最低月額四五万円を確保する旨の約束をしていたものであり、本件事故当時、少なくとも月額四八万円を下らない収入を得ていたと主張する。
この主張を裏付ける証拠である休業損害証明書(甲八)には、本件事故直前の昭和六三年九月ないし一一月の三か月間は、いずれも月額四八万円の給与を支払っていたとの記載がある。しかし、作成者であるSは、少なくとも、正確な数字を記載したものでないことを認めており(証人S)、この内容は採用できない。
また、原告は、本人尋問において、「M」東村山店を開店する際、Sと、最低限月額四五万円の収入と、明確な金額を決めてはいないものの、年間一二〇万円程度のボーナスを保証してもらえるとの合意をしており、現実には、月額五〇万円以上の収入を得ていたと供述し、原告作成の陳述書(甲二一)にも同旨の記載がある。
しかし、証人Sは、事故当時までは、給料や歩合など種々模索しながら経営をしてきたと供述するにとどまっており、少なくとも、金額の合意が存在したとは供述していない。他に、このような合意の存在を裏付ける証拠もない。したがって、原告本人の供述のうち、少なくとも、金額の合意に関する部分は、直ちには採用できない。
もっとも、原告が、本件事故当時、月額五〇万円以上の収入を得ていたことに沿う証拠として、昭和六三年五月から同年九月までの収支が記載された「M」東村山店の金銭出納帳(甲一二の1・2)が存在する。
しかし、原告が申請した証人であるSは、原告がこの金銭出納帳を作成したと供述するのに対し、原告本人は、原告が作成したものを前提に、Sが、税務対策上、支出はそのままに売上金額のみを減少させて作成し直したものであるとして、作成者という極めて重要な事項に関して相対立した供述をしている。
確かに、この金銭出納帳によれば、原告の本件事故前七か月間の各月収(保険料の支払も含む)は、いずれも五〇万円を上回っており、ボーナス月である六月を除いた六か月の平均月収は五五万円弱である(甲一二の1・2、三〇の1・2)。この数字は、金銭出納帳の摘要欄に「S、T」と記載されている支払金額をすべて原告の収入として含ましめている(甲一二の1・2、三〇の2)。しかし、証人S及び原告本人は、いずれも、
「S、T」と記載されているのは、二人で現金を分けたときであると供述し、原告本人は、どちらに幾ら支払われたのか定かでないし、Sに全額支払われたときもあると供述している。そして、摘要欄がこの記載であるときの支払金額欄は、二五万円程度の高額であることが多い(甲一二の1・2)。したがって、証人S及び原告本人の右供述内容を前提とする限り、月収は、先の毎月五五万円弱よりも、相当程度低いことになる。また、二人で分けたとすれば、「S」「T」とそれぞれ記載すれば足りるのであって、証人Sは、支払金額を含めた「S、T」欄をSが記載した箇所(昭和六三年一一月八日欄)があると自認していること、摘要欄の「S(家)」との記載は、Sの家に届けられたとの趣旨であると説明しながら、昭和六三年九月二〇日欄に、「S(家)」の「(家)」が消去されて「T」の記載がされていることについて、この「(家)」の記載は、家に持って帰るから支払ってほしいとTに伝えた分であるとして説明内容を変化させていること、この昭和六三年九月二〇日欄には、右とは別に、Tに二九万〇七一五円を支払った旨の記載があり同一期日に二回の支払がなされたかのような記載がある理由について、原告本人も、明確な説明をできないでいることなどの事情を併せて考えると、そもそも「S、T」欄の支払金額は、本当に原告に支払われているのか、後に「T」の記載を加えた可能性があるのではないかとの疑いも払拭できない。
ところで、原告は、源泉徴収を受けておらず、確定申告もしていない(証人S、原告本人)。したがって、現実収入の認定においては、それらに匹敵する厳格な証拠が必要であるというべきところ、先の金銭出納帳は、作成経過及び内容について不明朗な点が多く、この記載内容を採用するには躊躇せざるを得ない。そうすると、原告本人の供述及び陳述書の記載内容のうち、本件事故当時、原告が、月額五〇万円以上の収入を得ていたとの部分も直ちには採用することはできない。
(3)このように、原告の現実収入に関する正確な数字は定かでないものの、(1)で認定した業務内容からすると、少なくとも、昭和六三年賃金センサス産業計・学歴計・高卒男子二五歳から二九歳の平均賃金である年間三三一万五六〇〇円を下らない収入を得ていたと認めるのが相当である。

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