裁判例集
交通事故の損害賠償の裁判例:最判S50-1-31
交通事故の裁判例
不法行為または債務不履行による家屋焼失に基づく損害賠償額から火災保険金を損益相殺として控除することはできない。
交通事故の裁判例判旨
家屋焼失による損害につき火災保険契約に基づいて被保険者たる家屋所有者に納付される保険金は、既に払い込んだ保険料の対価たる性質を有し、たまたまその損害について第三者が所有者に対し不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償義務を負う場合においても、右損害賠償額の算定に際し、いわゆる損益相殺として控除されるべき利益にはあたらないと解するのが、相当である。ただ、保険金を支払つた保険者は、商法六六二条所定の保険者の代位の制度により、その支払つた保険金の限度において被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得する結果、被保険者たる所有者は保険者から支払を受けた保険金の限度で第三者に対する損害賠償請求権を失い、その第三者に対して請求することのできる賠償額が支払われた保険金の額だけ減少することとなるにすぎない。また、保険金が支払われるまでに所有者が第三者から損害の賠償を受けた場合に保険者が支払うべき保険金をこれに応じて減額することができるのは、保険者の支払う保険金は被保険者が現実に被つた損害の範囲内に限られるという損害保険特有の原則に基づく結果にほかならない。