裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:最判S37-12-14

交通事故の裁判例

自賠法3条にいう「他人」には交通事故を起こした自動車の運転者は含まれない。

交通事故の裁判例判旨

云うまでもなく自動車損害賠償保障法(以下本法と略称)は、その第一条(この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。)及び第三条(自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。)に明白な如く、賠償責任法理の進化によつて、自動車人身事故に関する限り、一般法上の過失主義を排し、責任淳化のため危険責任ないし企業責任的無過失責任主義を採用して自動車の「保有者責任」を強化し、従来のいわゆる中間的責任としての「使用者責任」を、その責任主体や責任条件等につき拡張前進せしめ、さらに賠償の淳化のため、責任保険制度を併置し、いわゆる責任法と保険法の二部構成の下に、自動車保有者(使用者)の賠償能力を補強し、被害者の救済を保障したものである。かくしてこの新責任法は、自動車保有者に対し、無過失責任を認めた点で、民法第七〇九条の、また使用者責任の場合よりも責任主体を広く保有者とし且つ自己及び被用者(運転者)につき責任条件を緩和した点で民法第七一七条のそれぞれ特例法ではあるが、しかし本法第四条は、自動車保有者の賠償責任については『前条(無過失的責任主義挙証責任転換、免責事由等に関する)の規定によるほか、民法の規定による』と明言している。したがつて例えば運転者の責任は依然として民法第七〇九条の過失主義によるとか、また被用者たる運転者がその使用者たる自動車保有者に対し賠償責任を請求し得るか何うかは、本法第三条によるほか、民法第七一五条の解釈適用によるとか、本法の特則を以つて足らざるところは民法の原則に従うべきであつて、民法一般を排除しているものではないのである。この本法と民法との関係の理解が本件において重要であつて、原判決の誤謬は正にその理解がなかつたことに基因するものである。二、運転者は本法が出来たために、その使用者すなわち自動車保有者に対するその業務上の事故損害の賠償請求につき、民法第七一五条時代より救済を薄くされる理由がない。いな前記の如く賠償責任を拡大強化した本法第一条の立法目的から解釈するも、保有者(使用者)は広く自動車人身事故被害者に無過失的賠償責任を負わされているのである。然るに狭い中間的責任を認めた民法第七一五条によるも、原判決理由二、(ロ)にも認めた如く、同条にいわゆる「第三者」には、「被用者であつても、加害行為者以外の者であれば、これを含むものと解するを相当とする。このことは、わが民法が英米法のいわゆる共働者の原則を否定し、仲間の被用者に対する加害についても事実関係において被害被用者に過失がなく加害被用者に過失ある場合に使用者責任の成立を認めているから疑がない。(なお大審院大正一〇年五月七日判決及び昭和三二年四月三〇日判決等も同趣旨である)したがつて事故を発生した当該自動車の運転者であつても、民法第七一五条の「第三者」に当る場合もあるとされ、運転者はその使用者たる自動車保有者に対し、例えば他の被用者すなわち本件では使用者たる春日部自動車運送株式会社の被用者訴外T等の整備修理係が不注意のためタイロット・アームに亀裂があるのに気付かずそのまま訴外Kに運転使用せしめたため路面のくぼみに落込むと共にハンドル操作の自由を失い墜落死するに至つたので右「他の被用者」の過失につき損害賠償を請求し得るのである。しかもこの場合の自動車保有者の賠償責任に対しとくに本法の責任保険の適用を除外すべき何等の実質的理由はなく、すべての被害者に対する本責任保険の適用を受けその賠償能力を保障されているわけであり、且つ被用者たる運転者もまた民法第七一五条なら責任追求ができるのに、その責任に対し本法で救済を保障されない理由は考えられない。これは左の三でさらに明白になろう。要するに、原判決が運転者を民法第七一五条の「第三者」に入れながら、本法第三条の「他人」に当らないとするのは、全く理由の齟齬ないし不備の違法ありと云うべきである。三、運転者は被保険者となるも、元来本法はその責任主体(保有者)、責任条件(無過失主義)につき特則を設け、運転者の責任は民法第七〇九条によることとされている。しかしなお本法は保険法においてこの運転者の民法第七〇九条により過失責任ある場合の責任保険を認め、その過失ある運転者を被保険者としているのである。しからば、加害自動車保有者と雖も民法第七一五条により、使用者として被用者たる無過失の運転者に賠償責任の存する場合には、右過失ある運転者と同様その民法上の責任につき、本法による責任保険の適用を受けるべき権利義務を有するものと云うべきであつて、その間毫も差別すべき合理的理由がない。四、なお原判決は、理由二、(ニ)において、本法第十一条上運転車は被保険者とされているから、運転者は被害者なるも「他人」には当らないとされる。しかしこれは本法全体が責任法と保険法の二部から構成され、責任の主体、客体等はすべて責任法で決定され、保険法はこれに対する賠償保険に関する規定であつて、右原判決の如く単に保険法上の手続的規定たる右第十一条から、責任法上の実体的規定たる第三条の責任客体を決定し被害者の範囲を限定づけることは手続法が実体法を制約するものとして許されない。この点において原判決は全く法の解釈適用を誤つたものと断ぜられるのである。五、原判決は理由二、(ホ)において、本法第三条本文において、自動車保有者を責任主体として規定づけ、且つ「他人」に対する無過失的損害賠償責任主義を確立した上、その但書において保有者及び運転者の無過失等を立証した場合を免責事由としている点からして、運転者は同条本文の「他人」に当らないとする。しかし本法が進歩的な責任法と保険法との併立制度たる趣意を体した上、平易に右の文理解釈をなすならば、「保有者」以外は運転者と難もすべて第三者であり、「他人」であることが明瞭であつて同条は加害自動車保有者は自己と運転者の無過失を立証すれば保有者の賠償責任を免れるとしただけの法意であつて、この免責事由の規定からして、抽象的に運転者が本法の被害者として「他人」となるか何うかをも規定づけるものではなく、只事実的に運転者が過失なく保有者の所為や他の被用者の過失等で被害を蒙れば、被害者であり、右の「他人」として加害自動車の保有者責任を追求し得るのであり、(原判決は、労災保険等の救済があるとするが、これは全くその趣旨性格、目的を異にした別個の問題である)これに反し過失ある運転者は民法七〇九条で賠償責任の成立する場合にのみ、当事者として本法中保険法第十一条の被保険者となるだけである。

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