裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:最判H11-7-19

交通事故の裁判例

普通乗用自動車の運転者には、接触車が自己の進行車線に進入してくることまでを予測して衝突等の事故の発生を回避する義務はない。

交通事故の裁判例判旨

 原審の右判断は、上告人の第二事故の回避義務が第一事故発生の時点で生じたことを前提とするが、前記事実関係によれば、第一事故は、下り車線内で発生したものであって、上告人の進行する登り車線内で発生したものではなく、また、事故の態様も被上告人車の前輪と八木車の右側後部とが接触するというものであって、このような場合、これを目撃した対向車線を走行する自動車運転者において、その時点で、接触車のその後の動向を予測することは極めて困難であるから、接触車が自己の進行車線に進入してくることまでを予測して衝突等の事故の発生を回避する措置を執るべきことを期待することはできない。そうすると、本件においては、第一事故発生の時点において上告人に右回避義務があったということはできず、右回避義務を問い得るのは、被上告人車が接地地点に至った時点(以下「接地時点」という。)であるというべきである。
 そして、原審の計算によると、上告人車が指定最高速度である時速四〇キロメートルで進行していたものとした場合における上告人車の停止距離は一七・九〇メートルであるというのであるところ、上告人車は、接地時点では、第二事故地点まで一五・八八メートルないしは一六・三一メートル(前者は、前記一九・七五メートルから、被上告人車が第一事故後接地地点までに要した〇・三一秒の間に上告人車が時速四五キロメートルで進行する距離三・八七メートルを差し引いたもの、後者は、右一九・七五メートルから〇・三一秒の間に上告人車が時速四〇キロメートルで進行する距離三・四四メートルを差し引いたもの)に接近していたことになるから、上告人が接地時点で急制動の措置を執ったとしても、第二事故地点の手前で上告人車を停止させることは不可能であったといわざるを得ない(なお、原審は、上告人車の停止距離を算出するに当たり、空走時間(自動車運転者が危険を発見し、これに反応して制動措置を執り、制動機能の効果が発生するまでの全時間)を〇・六秒としているが、通常、自動車運転者は、異常な事故の発生を予測して自動車を運転しているわけではないのであり、本件事故のような突発的事故に遭遇した場合における空走時間を〇・六秒とするのは、自動車運転者に酷に過ぎるというべきである。)。
 また、前記原審認定の本件事故現場付近の道路状況や被上告人車が上告人車の走行車線内に中央線から少なくとも一・三メートル以上進入していることに照らすと、その他の方法により本件第二事故を回避することも著しく困難であったというべきである。
 以上と異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。右の趣旨をいう論旨は理由があり、原判決は、その余の上告理由について判断するまでもなく破棄を免れない。以上に説示したところによると、上告人には過失がなく、また、自動車損害賠償保障法三条ただし書のその余の要件の存否について争いのない本件においては、上告人には同条ただし書の免責事由があるから、被上告人の請求は理由がない。したがって、被上告人の請求を棄却した第一審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却することとする。

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