裁判例集
交通事故の損害賠償の裁判例:最判H11-7-16
交通事故の裁判例
トラックに載せた鋼管くいをクレーン車の装置により荷下ろしする際に玉掛け作業を手伝ったトラックの運転者が鋼管くいの落下により死亡した事故につき、運転者が右クレーン車の運転補助者とはいえず自賠法3条の「他人」にあたると判断した。
交通事故の裁判例判旨
本件トラックにより本件工事現場へ運搬された鋼管くいは現場車上渡しとする約定であり、本件トラックの運転者Nは、Hが行う荷下ろし作業について、指示や監視をすべき立場になかったことはもちろん、右作業を手伝う義務を負う立場にもなかった。また、鋼管くいが落下した原因は、前記のとおり、鋼管くいを安全につり上げるのには不適切な短いワイヤーロープを使用した上、本件クレーンの補巻フックにシャックルを付けずにワイヤーロープを装着したことにあるところ、これらはすべてHが自らの判断により行ったものであって、Nは、Hが右のとおりワイヤーロープを装着した後に、好意から玉掛け作業を手伝い、フックとシャックルをワイヤーロープの両端に取り付け、鋼管くいの一端にワイヤーロープの下端のフックを引っ掛けて玉掛けをするという作業をしたにすぎず、Nの右作業が鋼管くい落下の原因となっているものではない。そうすると、Nは、本件クレーン車の運転補助者には該当せず、自賠法三条本文にいう「他人」に含まれると解するのが相当である。