裁判例集

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交通事故の損害賠償の裁判例:さいたま地裁H15-10-10

交通事故の裁判例

交通事故と後遺障害との相当因果関係を認めた、原告の後遺障害は、交通事故あるいは交通事故によって生じた経済的な問題を含めた諸障害に対する原告の対処・感受の仕方という心因的要因が寄与して発生したと推認できるとして、原告に生じた損害の約4割を減額した。

交通事故の裁判例判旨

二 本件事故と原告の後遺障害との因果関係
 上記認定の事実関係によれば、(1)原告は、本件事故後の診察では意識喪失がなく、CT検査やMRI検査などの検査による格別の異常は認められていないが、本件事故直後に嘔吐があり、その後も嘔吐や吐き気、しびれ感、頭痛などを訴え、春日部市立病院で頭部外傷〈2〉型及び頸髄損傷との診断を受けていることから、本件事故によって頭部に何らかの損傷を受けた可能性が高いと推認できる、(2)その後、原告は、引き続いて頭痛、眩暈、吐き気、嘔吐等の症状が継続する一方、食欲不振、不眠などの抑うつ状態が生じている、(3)退院後、原告は、喫茶店の閉鎖や債務の返済といった本件事故後の経済的問題等に直面し、さらに抑うつ症状が悪化して、見当識の喪失、情動失禁、幻覚・妄想等の諸症状が現われ、頭部外傷の後遺症とみなされるヒステリー症状,混合性解離性(転換性)障害が残った、と認められるから、本件事故と原告の後遺障害との間の法的因果関係を肯定するのが相当である。
 原告の後遺障害が生じた原因に原告の経済的問題があることは明らかであるが、本件事故によって原告に生じたと推認される頭部外傷とは無関係に経済的問題のみを原因に原告の後遺障害が生じたとは認め難いし、被告らが指摘する経済的問題は本件事故によって生じたものであるという意味でも因果関係が肯定できる(被告らが休業損害の賠償金を仮払いしていたことをもって、本件事故と経済的問題の発生との間の因果関係を否定することはできない。)から、いずれにしても原告の後遺障害の原因の一つに経済的問題があることは、本件事故と原告の後遺障害との因果関係を否定する理由にはならない。また、本件事故直後の診断で意識喪失が認められていないことや原告の精神障害が明確に認識されるようになったのが事故から一年数か月経過後であることは、上記因果関係の判断を妨げるものではない。 
三 素因による影響の有無
 身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合においても、その損害が加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、損害賠償の額を定めるに当たり、民法七二二条二項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の上記事情を斟酌することができるものと解するのが相当である。
 これを本件についてみれば、(1)本件事故は、同一方向に進行していた車両の側面接触事故であり、原告の傷害は、頸椎捻挫、腹部打撲傷、頭部打撲傷であったから、原告に発生した混合性解離性(転換性)障害と診断された重篤な後遺障害は、本件事故によって通常発生することが予想される被害の程度、範囲を超えるものである、(2)精密検査を行っても、脳神経系、中枢神経系に器質的病変を示す他覚所見が認められず、混合性解離性(転換性)障害の症状が明確に認知され始めたのは、本件事故から約一年四か月が経過した後である、(3)したがって、原告の重篤な後遺障害は、本件事故によって通常予想される損害の範囲を超えて、本件事故あるいは本件事故によって生じた経済的な問題を含めた諸障害に対する原告の対処・感受の仕方という原告の心因的要因が寄与して発生したと推認できる(本件事故の態様や外傷の程度からすれば、原告の感受の仕方及び精神的障害の状況は、個人の個体差として通常想定された範囲を超えていたものと認められる。)から、原告の重篤な後遺障害にまで損害が拡大したことに寄与した原告の心因的要因を斟酌して、損害の公平な分担の見地から、原告に生じた損害のおよそ四割弱を減額するのが相当である。

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